梅雨の晴れ間に起こった啓示・・・「連続1.7倍現象」とは?

久しぶりに全場良馬場で行われた2023年6月17日の中央競馬。馬場が悪いとなかなか思い切って狙えないものでつい馬券も手控えていた人々も、絶好の夏競馬日和で気分もおおらかになったことは間違いない。

そんな脳天気な気分を吹き飛ばす事件が発生したのは阪神競馬場だった。

以下のデータは、「本命馬責任検証班」が作成した「黒歴史ファイル2023/6/17」である。

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【1回函館3日10R 奥尻特別】ゴールドシーン 1.7倍 4着
[昇級] ゲート内でうるさく、出負けして4番手追走もそのまま伸びず。

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【3回東京5日4R 3歳未勝利】メモリーグラス 1.9倍 2着
[前走2着] 4走連続2着で人気も上がり目なく、またしても2着。

【3回東京5日7R 3歳未勝利】ネクストブレイク 1.7倍 4着
[前走2着][乗替] 鞍上ルメールで人気になり、好発から単騎で逃げられたが坂上で交わされて4着。

【3回東京5日8R 3歳上1勝クラス】ナイトインロンドン 1.9倍 1着
[昇級][乗替][馬体重-12Kg] 好位追走から直線引き離す。

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【3回阪神5日1R 障害3歳上オープン】ヤマニンマヒア 1.4倍 1着
[休養明け] 逃げて楽勝。

【3回阪神5日2R 3歳未勝利】ジュンフカリ 1.8倍 8着
[長休2戦目] 好発から先行するが、終始外目を回り直線伸びず。

【3回阪神5日3R 3歳未勝利】アウロス 1.5倍 2着
[前走2着][馬体重-10Kg] 好発から先行するが、3角から外を回り直線進出も、内ラチ沿いを回った逃げ馬に離され2着。

【3回阪神5日8R 3歳上1勝クラス】エルゲルージ 1.8倍 2着
[長休2戦目] うまく逃げ、直線で一時差を広げるも坂上で好位追走の2番人気馬に差される。

【3回阪神5日9R 3歳上2勝クラス】ラリュエル 1.7倍 1着
[休養明け] 逃げて最後に差を詰められるも勝ちきる。

【3回阪神5日10R 垂水ステークス】パラレルヴィジョン 1.7倍 3着
[乗替] 中位を進み、直線に賭けたが内を進んだ先行馬をとらえきれず3着。

【3回阪神5日11R 米子ステークスジャスティンスカイ 1.7倍 8着
[初斤量] 中団追走から4角で外を回り追い上げるも坂上でハテる。

【3回阪神5日12R 3歳上1勝クラス】リュウ 1.7倍 16着
[前走2着] 出していくが包まれズルズル後退し最下位入線。

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本命中の本命である1倍台の単勝(支持率40%以上)は、統計的には50%弱の的中率を示すものだが、この日出現した12レース中、的中はわずか3レースだった。

特に阪神競馬場では、なんと12レース中8レースで1番人気馬の単勝が1倍台となった。的中は2レースのみで、1番馬券の売れる10レースから最終レースまでの3レースで連敗し、メインと最終は馬券に絡まず、最終レースに到っては最下位入線という前代未聞の椿事が出来した。しかも9R(これは唯一的中したが)から最終12レースまで連続して1番人気馬の単勝オッズが1.7倍という怪奇現象!?までおまけに・・・

本命党を爆死させるこの椿事は、波乱の重馬場に飽いて予定調和の実現を望む多くの競馬ファンの潜在意識に応えるべくオッズ神が与えた啓示であったのだろうか?

ははは「やっぱり連闘は厳しいっすね!」

全国的に好天に恵まれ、夏競馬日和のもと行われた1回函館3日の結果ははたして・・・

(「なんてったって3歳馬」解答編)

【函館9R 下北半島特別】本命の3歳牝馬が快勝

1番人気の3歳牝馬ジューンオレンジは、馬体重16Kg増が心配されたが外枠から好位追走で難なく抜け出し快勝。ランフリーバンクスは、後方から最内を進むが、直線外に出せずに包まれた5着に終わる。4角で大外を回ったプリモカリーナがよく伸びて2着に入線した。ビップシュプリームは4着で結局3頭いた連闘馬は馬券に絡めず、2か月以上間隔をあけた馬たちが3着までを占めた。

【函館10R 奥尻特別】断然人気の3歳牡馬は若さを露呈し敗退
三重苦の3歳牡馬ゴールドシーンは出負けして横山武史騎手が抑えるも折り合いつかず5着に敗れる。2番人気の3歳牡馬ランヴァルは終始3頭並走の外を回る格好になり、4角で先頭も7着に終わる。馬具を変えたテラフォーミングが好発から平均ペースで逃げ、最後コスモフロイデに差されるも2着を死守。3着にはフォレスタが入って、3連単700倍超えの波乱となった。

【函館11R STV杯】人気の3歳勢は不発も11番人気の3歳馬が3着入線で大波乱
好発進から積極的に行ったアップリバーが逃切り、4番手で内ラチ沿いを進んだヴィアドロローサが2着に入り、好位追走の11番人気ジョリダムが3着に入線した。連闘で挑んだ前走函館日刊スポーツ杯の2,3,4着馬が1~3番人気を占めたがいずれも着外に敗れた。3頭いた3歳勢のうち、1番人気のワックスフラワーと4番人気ウメムスビはそれぞれ4着と15着に敗れた。「ヴィアドロローサから3歳馬に流す」の結果は、11番人気ジョリダムへのワイドが的中し、配当は59.4倍つけた。

【独り言】

「武はやめときゃよかった・・・」

テラフォーミング複勝しか取れなかったT_T」

「ワックスフラワー残せ・・・え、差されたの?・・・何ジョリダム!がーーん」

 

夏競馬は「なんてったって3歳馬」?

先週から始まっている函館競馬。今週は久方ぶりの週末晴れの予報で、気温も上昇して気分はもう夏競馬!

【函館9R 下北半島特別】
前売りでは、3歳牝馬のジューンオレンジとランフリーバンクスが1番人気と3番人気。同級勝ちのある6歳牡馬ハリウッドヒルズが2番人気。
この時期の下級条件は、3歳馬とりわけ牝馬が優位といわれているが、このレースもそういった構図。古馬勢では、先に行けて鞍上も高勝率のハリウッドヒルズが対抗視されている。
人気の3歳牝馬はともに追込み脚質のため、展開か世代比較かの判断が求められるレース。
前走函館の同距離で2着のビップシュプリームは5番人気で、ランフリーバンクスとともに連闘なのがマイナス評価されて若干人気を下げているが連下にはおもしろい。
前売りでは10倍以上付けているジューンオレンジとランフリーバンクスの馬連が本線だが、オッズがどこまで下がるか?ランフリーバンクスを頭から狙うのも面白い。


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【函館10R 奥尻特別】
前走未勝利勝ちの3歳牡馬ゴールドシーンが前売りで単勝1倍台の大本命。格上げ初戦で、乗り替わりで、関東馬という三重苦にもかかわらず単勝1倍台とは破格の評価。前走の勝ちっぷり、好調教と横山武史騎手で三重苦は帳消しされているか?
もう一頭の3歳馬は栗東所属の牡馬ランヴァル。前走は案外だったが、リフレッシュして未勝利勝ちの距離で見直されている。
古馬陣では、コスモフロイデとラウルピドゥが前売り2番人気、3番人気と高評価。前走不利のフォレスタは4番人気だが狙うならこっちか?波乱なら、馬具を変える8番人気テラフォーミングの一変。


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【函館11R STV杯】
武豊騎乗の関西3歳牡馬ウメムスビが5倍台の1番人気。重賞では足りなかったがオープン特別勝ちがある格上馬。ハンデも54Kgでトップハンデ馬とは3Kg差。
3歳牝馬関東馬ワックスフラワーが3番人気。こっちは前走同コースで3着の実績も連闘。
同レースで2着の4歳牝馬クラリティスケールが2番人気で当然これも連闘。
函館芝1200mにおける連闘馬は勝率が10%程度下がるが複勝率は変わらないので、連闘馬を買うなら連勝または3連系がお勧め。
トップハンデは57Kgの関西の4歳牡馬ヴィアドロローサ。前走東京で2着していて、洋芝OKなのが心強い。前売り6番人気で、ここから3歳馬に流すのが絶好の狙い目。


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ダミアン、おまえもか!

今年の日本ダービーをタスティエーラで優勝し、2019年のサートゥルナーリアの無念を晴らしたダミアン・レーン騎手が2024年6月13日までの1年間短期免許の交付はされないことがJRAから発表された。

何故か?先月のヴィクトリアマイルでソダシで発馬後斜行し、制裁(4点)を受けた件は割と話題になったので「それか!」と思った方も多いだろう。

しかし実際は累積制裁点という制度で、彼の場合は4/23東京8Rダイバリオン:ムチ(1点)、5/6東京7Rアルナージェイン:ムチ(2点)、5/7東京3Rアヴィオンドール:直線斜行(4点)、5/14東京11Rソダシ:発馬斜行(4点)、5/20東京5Rコスタレイ:ムチ(3点)、5/20東京7Rコントディヴェール:決勝線斜行(1点)、東京12Rスノーフレース:ムチ(4点)、5/27東京10Rカナテープ:ムチ(5点)とここまでで制裁点の合計は24点。再教育の基準31点まで後7点という状況だった。

この追い詰められた状況で、ダミアン・レーン騎手は日本ダービーに騎乗し、見事勝利したわけだが、短期免許の最終週の6/10東京4Rイッツオンリーユー:ムチ(8点)と痛恨の8点制裁を受け、来季の短期免許の取得が不可になってしまった。

外国人騎手にとっては、賞金制度の手厚いJRAでの騎乗機会を失うことは日本ダービーの進上金を帳消しにするほどの痛手となったはずだ。

斜行に関しては、不可抗力の場合もあるが、ムチの使用過多は100%騎手の責任であり、動物愛護の観点からも避けなければならないことは自明だろう。

諸外国においても、ムチの使用可能回数はフランスでは1レースで5回まで、米国ケンタッキー州では6回までで連打は2回だけ、ケンタッキーダービーに参戦したクリストフ・ルメール騎手が制裁を受けたことは承知の通り。

jra.jp

このような諸外国の状況に対して、JRAは昨年まで連続10回まで認められていたムチの使用を今年から連続5回までに制限することにした。比較的制限の緩いオーストラリアで騎乗するダミアン・レーン騎手にとって、この制限強化は痛手だったことは想像に難くない。しかし、短期免許の期間中にムチ使用過多で6回の制裁を受けるということは通常考えにくく、重い処分もやむなしであり、本人の自戒が強く望まれる。

回数の問題はさておき、ルメール騎手やダミアン騎手のレベルになるとムチを使用しても馬を追う姿勢に乱れは少ない。しかしなかには、追わずに直立したままムチを入れる騎手もいて、馬は伸びずに下がっていく姿を見るとまことに情けない。

ムチを使うよりも人馬一体で追う姿を見せて欲しいと願うのは私だけだろうか?

無敗の皐月賞馬の明暗

日本ダービー出走の各馬がゴール番を通過した直後、目の前で起きた悲劇に人々は呆然とし、本来は衝撃的であったはずのレース結果に驚く余裕を失っていた。

単勝1倍台の大本命であった無敗馬ソールオリエンスが、皐月賞とは打って変わった平凡な末脚で前を行く勝馬タスティエーラを交わせず2着に敗れた。

2年前に起きたエフフォーリアの敗戦と状況が重なり、騎手の横山武史にとっては悪夢の再来であった。無敗の皐月賞馬として日本ダービーに出走した馬は、今世紀になってからはディープインパクト、コントレイル、サートゥルナーリア、エフフォーリアとソールオリエンスの5頭のみで、前の2頭は無敗のまま3冠を達成している。

したがって馬の力という点では、前の2頭と横山武史騎乗の2頭では差がある、と言えなくもないがそれも結果論で、前評判では2頭とも3冠を狙えるレベルと判断する予想家も多かった。

さらに過去を振り返ってみると、無敗の皐月賞馬はミホノブルボントウカイテイオーシンボリルドルフなどいずれも歴史的名馬で日本ダービーを勝っている。しかし、日本ダ-ビーで初の敗戦を喫した馬たちもいる。古くからの競馬ファンにとっては忘れられない2頭が、ハイセイコーとトウショウボ-イだろう。

ハイセイコーが、当時はダービートライアルだった東京2000mのNHK杯に出走し、逃げるカネイコマとの直線坂上での絶望的な差を奇跡的な末脚で逆転し、中央転厩後無傷の4連勝を飾ったときは、「この馬は負けないんじゃないだろうか?」と多くのファンに夢を与えたものだった。

youtube.com/watch?v=fr9hxU7XANw


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日本ダービーの同じ坂上タケホープイチフジイサミに交わされて力尽きたときに日本中に湧き上がった悲鳴にも似た嘆きを未だに記憶しているオールドファンも多いのではないだろうか?

 

その年は東京競馬場で行われた皐月賞で、トウショウボーイテンポイントを相手に5馬身差で圧勝した。


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その雄大な馬体と抜群のスピードは多くのファンを魅了し、日本ダービーでは単枠指定されて単勝1倍台の大本命となった。しかし、結果はクライムカイザーの奇襲の前に敗れ、またしても無敗のダービー馬の誕生はならなかった。

ハイセイコートウショウボーイ日本ダービーでの敗因については様々に語られているが、共通しているのは「前走で衝撃的な勝ち方をしている」という点だろう。

皐月賞でエフフォーリアは2着のタイトルホルダーを3馬身ちぎり、ソールオリエンスは大外最後方から抜け出したタスティエーラを差し切るという圧倒的なパフォーマンスを演じた。いずれも日本ダービー単勝1倍台の支持を集めるに足る衝撃だったといえる。

2001年以降、日本ダービー単勝1倍台の人気を集めた馬は前述の無敗の皐月賞馬5頭とフサイチホウオードゥラメンテの計7頭存在する。このうち勝ったのは3冠馬2頭とドゥラメンテの計3頭で勝率は42.9%となる。

2001年以降、JRAの芝2400mにおける単勝1倍台の馬の成績は315戦138勝で勝率43.8%なので、日本ダービーでの結果とほぼ一致する。したがって、このデータからは日本ダービーでの結果に統計学的に意外な要素はどこにも無く、敗因の追求は無意味に思えるかもしれない。

しかし、さらにオープン競走に絞れば47戦26勝で勝率55.3%となり、日本ダービーの過酷さが現れてくる、といえなくも無い。

いずれの立場でも、わずか7回の事象を統計処理してもあまり意味がなく、はっきりしているのは「競馬の結果は事前の予想の斜め上を行く」という理の重さだけではないだろうか?

 

競馬の新年だから、ブログでも始めようかと・・・

今年のダービーは、様々な意味で「エポックメーキング」なレースだった。

これまでの競馬テレビ中継では忌避することが鉄則だった倒れている競走馬の映像が一瞬だが流れ、しかもそれが2番人気のルメール騎乗馬だったこともあり、多くの視聴者に強烈なインパクトを与えた。

ほとんどの競馬ファンは考えたことさえなかったであろう競走馬の事故死という事象に、強烈なスポットライトが(おそらく初めて)当たった瞬間であり、その後のSNSには動物愛護の文脈で語る人が激増した。

さらにそういった(感傷的ともいえる)リアクションに反発する業界関係者も出現して、あえてダークサイドを見ないようにしてハッピーな競馬文化を堪能していた多くの競馬ファンに、ほんのひと時だが競走馬の馬生を考える機会が与えられた。

そしてSNSも沈静化していったころ、今度は超高齢馬の訃報が飛び込んできた。5月30日にナイスネイチャ生まれ故郷の渡辺牧場で35年の馬生を閉じたのだ。種牡馬引退後は特定非営利活動法人引退馬協会」のフォスターホースとして余生を過ごしていた同馬は存命のJRA重賞勝ち馬としては最高齢だった。

rha.or.jp

ナイスネイチャには鳴尾記念をはじめ良い思い出が多かったので、フォスターホースになれたことはうれしいことだったが、競走成績や種牡馬成績は決して抜群とは言えず、稀代のブロンズコレクタとしての名声?が幸いしたものであろう。

サラブレッドは英国貴族の趣味で作り出され、一時は軍馬改良などのお題目もあったが、今日では全世界で10兆円を超える規模のビジネスの源泉となっている経済動物である。

1頭のサラブレッドの飼育には相当な費用が掛かることを考えれば、過酷な優勝劣敗の法則が支配する現状も認めざるを得ない。しかし、競馬のすべてのキャッシュフローの源泉である馬券購入者のわれわれ競馬ファンも、一時の感傷ではなく、構造的な問題について考えていくことが求められているのではないだろうか?

もし、その結果としてフォスターホースが1頭でも増えれば、それがスキルヴィングの供養にもなると思いたい。