WIN5に関する2冊のKindle本の驚くべき違いとは・・・

現在競馬歴4年の雨傘氏

2019年の高松宮記念から競馬を始める。指数とトリプルバイアスを組み合わせた予想理論を構築。

出典:雨傘. 完全WIN5erマニュアル: 帯を喰らう (p.4). Kindle

始めていきなり予想理論を構築するとは、なかなかスゴイ人である。「一番簡単な競馬指数の作り方」というKindle本が売れ筋ランキング1位になったらしい。

今回読んだのは、「WIN5で帯封を取る」という趣旨の本。内容は、初心者向けに語りかける文体で情緒的。情報商材のランディングページのテクニックを使用しているのが若干気にかかる。

雨傘流オッズ理論

雨傘流オッズ理論では単勝オッズのどこをみるのか?

①1番人気の単勝 オッズ ②断層の有無 ③1番人気のオッズ×10以下の頭数の3点です。

出典:同上 

具体的に言うと、1番人気の単勝オッズが3倍未満で、6番人気までにオッズが一つ上位の人気の2倍以上になる断層と呼ぶものがあり、かつ1番人気のオッズの10倍以内に入っている馬が9頭以下、という条件を満たしたレースを「Aパターン」と定義する。

何をしたいのか?

「Aパターン」のレースの中から、さらに1番人気の堅そうなレースを絞り込み、そのレースを1番人気の1点買いとする、ことを目指している。

趣旨は分かるが、具体的な絞り込み方法は意味不明の「簡易AI」なるものが登場し、驚くべき結果に・・・

どんな1番人気がしっかり勝ち切るのでしょうか?競馬新聞に記載されている内容を特徴量にし、簡易AIを作って調べてみました。そこで判明した特徴量重要度は高いものから順に・調教師・騎手・馬体重・出走頭数・距離になりました。

出典:同上 

その後、1番人気の統計データが続き、最後にサンプルの実践データが「落ち」付きで紹介される。オッズ理論の着眼点はユニークで興味深いが、その根拠となる統計データが示されていなかったのが残念だ。

駿河台の「黒い太陽」氏

著者:黒い太陽

明治大学文学部史学地理学科中退

好きな馬はトウカイテイオー競馬歴に関しては25年ほど

黒い太陽.なぜWIN5は予想をすると当たらないのか:プラスで攻略するためのロジック(攻略本)(Kindleの位置No.8-11).Kindle版.

こちらも情報商材的な自己紹介から始まり不安を覚えるも、内容に信憑性があり信用して読み進む。過去のブログ等の再編集とのことで、やたら文字が多い。

単複についての持論

単勝で勝負できる人が最も羨望の対象である。理由は言わずもがなで競馬の最もシンプルな馬券の買い方だということ。これが楽に回収できるようになればWIN5なんて延長線上に過ぎなくなるわけで的中の期待値も最長老様に潜在能力を開花させてもらわなくても何とかなってしまう。

出典:同上.

まさに正論で、逆に言えば「単勝で回収できるのであればWIN5を買うまでもない」ということ。この後、WIN5ではない馬券についてと有料予想・無料予想についての話が続く。

競馬で食ってる人たちの実情

スポーツ新聞の記者や専門紙のTMなんかは(中略)なぜ勝てていないのか?新聞などで公開している成績ランキングも大半がマイナスだし、TVやグリーンチャンネルで解説しているような人たちにしても収支はほぼマイナス。(中略)それなのに彼らがなぜ食えているのか?そりゃ、プロ馬券師じゃないから。根っこのところは会社や事務所に所属していたり、競馬タレントだったりであってけして馬券で食っているプロではない。馬券収入で生活しているわけではないからはずれても生活は保証されている。

出典:同上

この辺は競馬界のタブー的なお話。以下実名も挙げられていてかなり刺激的。確かに、CSでやってる長寿の競馬予想番組で番組全体の通算回収率を毎週公表しているが、80%を下回っている。それを堂々と出しているということは「そんな程度で当たり前」という感覚に制作側がなっていることを示していて、競馬メディアの本性を垣間見る気がする。出演している予想家たちのメンタルの強さも驚きの対象だろう。

WIN5との悪戦苦闘史

人間というのはどうしても思考に感情が付け加えられるため、自分ではニュートラルな予想をしているつもりでもどうしても好き嫌いや射幸心もあって余計な穴狙いで夢を見たり、自信がないのに点数を削ったりしてリスクを増やしてしまう。

出典:同上

この本のテーマである「なぜWIN5は予想をすると当たらないのか」について語った部分だが、これは誰しも馬券を外したときにする典型的な反省パターン。しかし、前半の「馬券で食ってた」的な過去からすると若干違和感がある。WIN5が当たらない最大の理由は「資金力のなさ」であり、実際大量購入して高額的中させた芸能人の話もよく聞く。じつは購入資金についてはもっと後で触れられているのだが、話はいよいよ核心に入っていく。

外れてもソフトのせい?

ここでついに具体的な手段の話が出る。それは・・・

本来ならWIN5の予想に特化した予想ソフトを開発したいのが本音。でも残念ながら自分にはそんなスキルもないし、外注できる知り合いもいない。

出典:同上

というわけで既存のJRA-VANの競馬予想ソフトを使用することに。ここに至る経緯は共感できるものがあるが、最後は自力で開発して欲しかった、とつい思ってしまう。

しかし、さすがにベテランだけあって実践的な話が満載で、決して読みやすい文章ではないが一読する価値はある。WIN5的中に役立つかはともかく、ある程度の競馬歴があれば読み物として楽しめることだろう。