ラストミニッツベットの知られざる世界

ラストミニッツベットとは?

オッズを注視しながら馬券を買っているファンはしばしば遭遇するオッズの急降下。これは何故起こるのか?理由は明白で締切直前に大量に買われたから。極端な場合だが、20倍台の単勝が10倍台に半減、なんてこともたまにあったりする。

実際にどれくらいの投票が締切直前に行われているのか?実例として、8月6日のレパードS単勝売上げを見てみる。

1番人気ミスティックロア

 締切10分前(15;34)約40万票

 締切5分前(15;39)約48万票(+8万票)

 確定 約80万票(+32万票)

5番人気ライオットガール(勝馬

 締切10分前(15;34)約11万票

 締切5分前(15;39)約12万票(+1万票)

 確定 約20万票(+8万票)

最後の5分間

ラストミニッツとはいっても締切1分前に買うのはなかなかなので、実際には5分前ぐらいから売り上げは急増し、総売上の約4割は最後の5分間に投票されている。レパードSの例では、1番人気馬も5番人気の勝馬も同様の傾向が確認できる。

波に乗るべきか?

ファン心理として、自分の買った馬券のオッズが下がった場合の受け止め方は人それぞれだろう。配当の期待値が下がることに嫌気が差すか、的中確率が上がったと解釈し好感するか、がその人の馬券戦略を如実に表すことになる。

経験的に言って、前者は負け組のことが多い。馬券は集合知のゲームなので、原則として人気のある方に賭けるべきである。統計的には、1番人気馬の勝率は常に2番人気馬のそれを上回っている。ただし、それだけでは回収率80%前後に止まり、勝てないのは言うまでもない。

したがって、波に乗るのが正しいにしても、どの波に乗るかが重要となる。

ワイプアウトされたテンノメッセージ

レパードSの次の新潟12Rで、締切10分前の時点での1番人気馬は大外#18の戸崎圭太騎手騎乗のテンノメッセージだった。この時点で同馬の単勝は4.3倍で、2番人気には単勝5.1倍のアイオブザストームがつけていた。

ここから最後の大波が起きる。勝ったアイオブザストームが最後の10分間で単勝19万票を売り上げたのに対し、テンノメッセージは約13万票で大逆転。最終的には、アイオブザストーム4.3倍、テンノメッセージ5.3倍という結果になった。

レースでも、有利な大外から名手戸崎騎乗で期待されたテンノメッセージだったが、直線前が開かずに不完全燃焼で最下位の入着となってしまった。

これは、ラストミニッツの波に乗る典型的な成功例だが、ではどのようにこの集合知を馬券に活かせば良いのか?次回以降で検証していきたいと思う。

 

 

 

フィロロッソは消し?・・・川田将雅の憂鬱

梅雨明け間近の函館最終週

一部地方では梅雨明けを思わせる気候の7月15日、今週で最終週となる函館と福島、中京の3場開催が行われた。
中京競馬場は、稍重から始まったが好天に恵まれ、芝は4R以降、ダートも10R以降良馬場に回復した。そんな天候を反映してか、12レース中7鞍で単勝1倍台の大本命馬が出現した。同じく、函館では3鞍、福島では1鞍が単勝1倍台だった。

7月15日単勝1倍台の競走結果

【3回中京5日】
 1R 2歳未勝 アスクワンタイム  1.4倍 1着 [前走2着]
 2R 3歳未勝 オシゲ*       1.7倍 2着 [前走2着][中1週]
 3R 3歳未勝 デアデルマーレ*   1.6倍 1着 [前走2着][中1週]
 9R 3歳1勝 アルナージェイン*  1.8倍 6着 [前走2着][休養明け][乗替][初騎乗]
10R 大府特別 ゼットリアン    1.7倍 1着 [前走2着][乗替][初騎乗]
11R 関ケ原S レッドラディエンス* 1.9倍 2着 [初コース][昇級][休養明け]
12R 3歳1勝 エメラルドビーチ*  1.8倍 4着 [初コース][乗替][初騎乗]
【2回函館5日】
 2R 3歳未勝 パラディ      1.9倍 1着 [前走2着][乗替]
 4R 3歳未勝 ポルトドール    1.5倍 3着 [前走2着]
 6R 3歳未勝 ジョーエスポワール 1.7倍 3着 [前走2着][連闘]
【2回福島4日】
 7R 3歳未勝 トロピカルライト  1.8倍 1着 [中1週]

不完全燃焼の川田騎手

中京開催の7鞍は3勝2着2回着外2回という成績だったが、そのうち川田将雅騎手が騎乗した5鞍は1勝2着2回着外2回で大ブレーキとなった。その5鞍の内容を詳しく見てみる。

(1)2Rのオシゲは、出負けして中団を追走、4角から大外を回って強引に先行馬を交わすも軽量馬に差され2着。
(2)3Rのデアデルマーレは、好発から楽に番手を確保。直線で逃げ馬をなかなか交わせず、ゴール前でようやく3/4馬身前に出る。
(3)9Rのアルナージェインは、発馬五分で3番手につけるもスローで折り合いつかず、直線も内ラチ沿いを進むも追いづらく後退して6着。
(4)11Rのレッドラディエンスは、発馬五分で好位の内につける。4角で外に出せず、内を選択するも前が開かず。ゴール前で外から来た勝馬に差されるも混戦の2着争いを地力で制す。
(5)12Rのエメラルドビーチは、出負けして後方から徐々に進出。4角大外から差を詰めるも先行馬群に追いつけず4着。

着外に終わった(3)と(5)は、いずれも[乗替][初騎乗]で不運な面もあったが、リーディングトップの川田将雅騎手としては物足りない結果。

明日はどっちだ?

同騎手は明日の7月16日は中京で3鞍に騎乗する。
 3R 3歳未勝 コスモグングニール 単勝4.0倍(2番人気)[前走2着][休養明け]
11R 名鉄杯  フィロロッソ    単勝6.0倍(2番人気)[初コース][乗替]
12R 3歳1勝 ソノママソノママ  単勝3.4倍(1番人気)[乗替][初騎乗]

前日売りの段階ではいずれも人気になっており、取捨が重要なポイントになることは間違いない。コスモグングニール以外の2頭はいずれも後ろから行く馬だけに、思い切って軽視するのもありではないか?

WIN5に関する2冊のKindle本の驚くべき違いとは・・・

現在競馬歴4年の雨傘氏

2019年の高松宮記念から競馬を始める。指数とトリプルバイアスを組み合わせた予想理論を構築。

出典:雨傘. 完全WIN5erマニュアル: 帯を喰らう (p.4). Kindle

始めていきなり予想理論を構築するとは、なかなかスゴイ人である。「一番簡単な競馬指数の作り方」というKindle本が売れ筋ランキング1位になったらしい。

今回読んだのは、「WIN5で帯封を取る」という趣旨の本。内容は、初心者向けに語りかける文体で情緒的。情報商材のランディングページのテクニックを使用しているのが若干気にかかる。

雨傘流オッズ理論

雨傘流オッズ理論では単勝オッズのどこをみるのか?

①1番人気の単勝 オッズ ②断層の有無 ③1番人気のオッズ×10以下の頭数の3点です。

出典:同上 

具体的に言うと、1番人気の単勝オッズが3倍未満で、6番人気までにオッズが一つ上位の人気の2倍以上になる断層と呼ぶものがあり、かつ1番人気のオッズの10倍以内に入っている馬が9頭以下、という条件を満たしたレースを「Aパターン」と定義する。

何をしたいのか?

「Aパターン」のレースの中から、さらに1番人気の堅そうなレースを絞り込み、そのレースを1番人気の1点買いとする、ことを目指している。

趣旨は分かるが、具体的な絞り込み方法は意味不明の「簡易AI」なるものが登場し、驚くべき結果に・・・

どんな1番人気がしっかり勝ち切るのでしょうか?競馬新聞に記載されている内容を特徴量にし、簡易AIを作って調べてみました。そこで判明した特徴量重要度は高いものから順に・調教師・騎手・馬体重・出走頭数・距離になりました。

出典:同上 

その後、1番人気の統計データが続き、最後にサンプルの実践データが「落ち」付きで紹介される。オッズ理論の着眼点はユニークで興味深いが、その根拠となる統計データが示されていなかったのが残念だ。

駿河台の「黒い太陽」氏

著者:黒い太陽

明治大学文学部史学地理学科中退

好きな馬はトウカイテイオー競馬歴に関しては25年ほど

黒い太陽.なぜWIN5は予想をすると当たらないのか:プラスで攻略するためのロジック(攻略本)(Kindleの位置No.8-11).Kindle版.

こちらも情報商材的な自己紹介から始まり不安を覚えるも、内容に信憑性があり信用して読み進む。過去のブログ等の再編集とのことで、やたら文字が多い。

単複についての持論

単勝で勝負できる人が最も羨望の対象である。理由は言わずもがなで競馬の最もシンプルな馬券の買い方だということ。これが楽に回収できるようになればWIN5なんて延長線上に過ぎなくなるわけで的中の期待値も最長老様に潜在能力を開花させてもらわなくても何とかなってしまう。

出典:同上.

まさに正論で、逆に言えば「単勝で回収できるのであればWIN5を買うまでもない」ということ。この後、WIN5ではない馬券についてと有料予想・無料予想についての話が続く。

競馬で食ってる人たちの実情

スポーツ新聞の記者や専門紙のTMなんかは(中略)なぜ勝てていないのか?新聞などで公開している成績ランキングも大半がマイナスだし、TVやグリーンチャンネルで解説しているような人たちにしても収支はほぼマイナス。(中略)それなのに彼らがなぜ食えているのか?そりゃ、プロ馬券師じゃないから。根っこのところは会社や事務所に所属していたり、競馬タレントだったりであってけして馬券で食っているプロではない。馬券収入で生活しているわけではないからはずれても生活は保証されている。

出典:同上

この辺は競馬界のタブー的なお話。以下実名も挙げられていてかなり刺激的。確かに、CSでやってる長寿の競馬予想番組で番組全体の通算回収率を毎週公表しているが、80%を下回っている。それを堂々と出しているということは「そんな程度で当たり前」という感覚に制作側がなっていることを示していて、競馬メディアの本性を垣間見る気がする。出演している予想家たちのメンタルの強さも驚きの対象だろう。

WIN5との悪戦苦闘史

人間というのはどうしても思考に感情が付け加えられるため、自分ではニュートラルな予想をしているつもりでもどうしても好き嫌いや射幸心もあって余計な穴狙いで夢を見たり、自信がないのに点数を削ったりしてリスクを増やしてしまう。

出典:同上

この本のテーマである「なぜWIN5は予想をすると当たらないのか」について語った部分だが、これは誰しも馬券を外したときにする典型的な反省パターン。しかし、前半の「馬券で食ってた」的な過去からすると若干違和感がある。WIN5が当たらない最大の理由は「資金力のなさ」であり、実際大量購入して高額的中させた芸能人の話もよく聞く。じつは購入資金についてはもっと後で触れられているのだが、話はいよいよ核心に入っていく。

外れてもソフトのせい?

ここでついに具体的な手段の話が出る。それは・・・

本来ならWIN5の予想に特化した予想ソフトを開発したいのが本音。でも残念ながら自分にはそんなスキルもないし、外注できる知り合いもいない。

出典:同上

というわけで既存のJRA-VANの競馬予想ソフトを使用することに。ここに至る経緯は共感できるものがあるが、最後は自力で開発して欲しかった、とつい思ってしまう。

しかし、さすがにベテランだけあって実践的な話が満載で、決して読みやすい文章ではないが一読する価値はある。WIN5的中に役立つかはともかく、ある程度の競馬歴があれば読み物として楽しめることだろう。

 

史上最高額の枠連配当を演出!張り切りすぎたムサシとは・・・

良馬場でも荒れる!?

7月9日の競馬は、この時期には珍しく函館・福島は良馬場で、若干の降雨があった中京は稍重馬場で行われた。
この日も函館で3鞍、福島で4鞍の単勝1倍台の大本命馬が登場した。しかしその結果は対照的で、函館では3鞍とも大本命馬が勝利したが、福島ではなんと全敗するという衝撃の結果が・・・

大本命馬(単勝1倍台)の競走結果

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【2回福島4日1R 障害未勝利】アイスジャイアント 1.6倍 3着 [初コース][前走2着][休養明け]
【2回福島4日4R 3歳未勝利】ベルウッドムサシ 1.9倍 3着 [初コース]
【2回福島4日6R 2歳新馬】ガラクシア 1.5倍 2着 [初騎乗][初コース]
【2回福島4日10R 天の川賞】ハッスルダンク 1.7倍 6着 [昇級][休養明け]
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【2回函館4日2R 3歳未勝利】ヴァンナチュール 1.2倍 1着 [前走2着][中1週][乗替][初騎乗]
【2回函館4日5R 2歳新馬】レガレイラ 1.4倍 1着 [初騎乗][初コース]
【2回函館4日8R 3歳1勝クラス】イトカワサクラ 1.9倍 1着 [乗替][初騎乗][初コース][休養明け]
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以下で、各鞍の大本命馬敗因について詳しく解説する。

バンケットは疲れる・・・

福島1Rの障害戦の大本命馬アイスジャイアントは、新馬勝ちし、2戦目に「JBC2歳優駿」を楽勝した素質馬。その後の成績が振るわず、障害入りしたが、初障害の前走を2着し、地力から単勝1.6倍の大本命に推された。

調教も良く、馬体重は前走より-6Kgと絞れ、パドックでも落ち着いていたので臨戦過程に問題は無かった。

レースでは、好位を追走したが3角で鞭が入り、追い上げたが勝馬から1.2秒差の3着に終わった。

飛越もうまいとは言えず、500Kgを超える馬格からバンケットも堪えそうで、単勝1.6倍は過大評価だった可能性が高い。ただし、根性はありそうなので次走以後に期待したい。

ひさしぶりだし、暑かったし

福島4Rの3歳未勝利戦は、ベルウッドムサシが単勝1.9倍の大本命に推された。締切20分前までは1.7倍のオッズだったが、直前に大きく売上比率を下げていた。

その原因は、2人引きで鶴首になり、激しく発汗が見られたパドックにあった。トウスポには「追い切り軽めも不安なし」とあったが、前々走までは使用していた美浦の坂路が使えなくなり、中間ウッドでの追い切り2本のみの臨戦過程でイレコミを招いた可能性が高い。

レース結果は中団追走で差を詰めて3着だったが「行った行った」の決着で勝馬単勝は300倍を超え、枠連は史上最高配当を記録するという大波乱の原動力になってしまった。リスク管理の観点からは典型的な「危険な大本命馬」だったと言える。

妹はやんちゃ姫

福島6Rは、日経新春杯を勝ったモズベッロの妹で仕上がり良さそうなガラクシアが1.5倍の人気を集めた2歳新馬戦。

抜群のスタートから先手を取り、内から先行するニシノオウジョの外を番手で追走し直線へ。ニシノオウジョを交わして先頭に立つと、外に逃げる仕草。斎藤新騎手が必死で修正しようとするがどんどん外へ逃避してまともに追えず。結局、ラチ沿いを進んだニシノオウジョに差し返されて2着に敗れる。

新馬戦だけに、「姫のやんちゃにはかなわないなあ」と笑うしかない。

3歳馬ブランド?

福島10Rの天の川賞では唯一の3歳馬ハッスルダンクが断然の1番人気になった。最終的には1.7倍になったが直前まで単勝1.6倍=得票率50%という支持を集めていた。

昇級戦、初コース、休み明けなどの悪条件を乗り越えてこれだけの支持を集めたのは、未勝利、1勝クラスを楽に連勝してきた3歳馬というブランド的評価が大きかったと思う。

下級条件で楽勝していた昇級馬がクラスの壁で惨敗するケースはこれまでも多く見られてきた。また、3歳馬ブランドも2勝クラスになるとやや効果が薄れることは間違いない。そんな過酷な昇級戦で過剰に期待を背負った若駒が先輩の洗礼を受けた、ということだろう。

 

単勝オッズ1.3倍!それでも単勝買いますか・・・?

割と平穏な一日

7月8日の開催は、各競馬場の芝・ダートとも良馬場で行われた。函館・福島では単勝1.3倍の本命馬が3鞍、中京では単勝1.6倍と1.7倍が計3鞍行われた。
結果は以下の通りで、単勝1.3倍の3鞍では1勝2着2回に終わったが、中京では3鞍とも勝利した。

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【2回函館3日1R 2歳未勝利】メイショウマサユメ 1.3倍 2着 [前走2着][中1週]
 出負けして押して先頭に立つが、ゴール直前で差される。
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【2回福島3日1R 2歳未勝利】マスクオールウィン 1.3倍 1着 [乗替][初騎乗][初回り][初コース]
 好発進から好位につけ、4角で先頭に立ち押し切る。
【2回福島3日5R 2歳新馬ルシフェル 1.3倍 2着 [初騎乗][初回り][初コース]
 出足つかず後方から徐々に進出し、4角で大外を回り追い上げるが2着まで。
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【3回中京3日6R 3歳1勝クラス】エンペラーワケア 1.6倍 1着 [昇級][初回り][初コース][休養明け][馬体重+16Kg]
 やや出負けして好位を追走、直線では外から先行馬を交わし競り勝つ。
【3回中京3日9R マカオJCT】ブライトジュエリー 1.7倍 1着 [乗替][初騎乗][初コース][休養明け]
 発馬五分で好位の内ににつける。直線では馬群をさばいて抜け出す。
【3回中京3日10R インディアT】サンライズフレイム 1.7倍 1着 [昇級][初コース]
 発馬五分で中団前の内ににつける。直線ではインをついて抜け出す。
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買っていればプラスに!

これらの全てのレースで1倍台の単勝を均等に買ったとすれば、6戦4勝で配当合計は630円で回収率105%となった。

誰が買っているのか?

単勝1倍台ということは単勝売上の40%を超える投票があったということだが、4割以上の人が1倍台の単勝に投票したとは思えない。こんな低配当の馬券を買う以上、それなりの金額を賭けていることは間違いない。

締切直前に・・・

これらの6鞍のうち最も単勝馬券が売れた「インディアトロフィー」でのサンライズフレイムへの投票が約30万票、金額にして3千万円である。
その約53%の16万票が投票締め切りまでの約5分間に投じられている。この票数には、かなりの割合で大口投票が含まれているとみて良いだろう。

前売りで勝負!
一方、個人が前売りで買ったと思われる最大の票数は、6,500票で金額にして65万円である。これはオッズから考えて、100万円にすることを意図していたと思われる。おめでとう!

不都合な真実!?

2001年以降のJRAの全レースで単勝1倍台が出現したのは17927回で的中は8755回、単勝回収率は78.2%、平均配当額は160円である。
不思議なことに、単勝回収率は2021年以降80%を超えていて、2023年はこれまで81.3%を記録している。
単勝オッズのレンジ別回収率が1番良いのは11倍台(11.0~11.9倍)で87.9%、ここ3年は90%を超えていて今年は98.5%を記録している。
明らかに分が悪い単勝1倍台の馬券で勝負する人が絶えないのはいったい何故であろうか?興味は尽きない・・・

やっぱり出現した「ChatGPTを使った競馬攻略法」

生成AIのブームに乗って

キンドルで読める「競馬+ChatGPT」本をひとつ紹介する。

”本書「勝利する馬のためのAI活用:包括的ガイド」では、このテーマについて徹底的に探求し、AIを予測にどのように適用できるか、関与するさまざまな技術、そして途中で現れる倫理的考慮事項について明らかにします。”(出典:AI競馬予想研究会. 勝利する馬へのAI活用ガイド:ChatGPTを使った競馬攻略法.Kindle版) 

以前試しにBingの生成AIチャットで馬券がらみの専門的な質問をしてみたが、どこかのサイトの不正確な情報を返してくるだけで、競馬情報はデータベースとして持っていないことは明らかだった。そんな経験からこの本に興味を持ったわけだが、「倫理的考慮事項」って何?

競馬における倫理とは?

”競馬におけるAIの利用が進化し続ける中、倫理的な意味合いや課題が発生する可能性があることを考慮することが極めて重要です。”
(出典:同上)

具体的には「データのプライバシー」や「特定の馬や調教師を不当に有利にするためのAIの使用に関する懸念」とのことだが、全く何を言っているのやら、「AIは万能」なのか?

この本の成り立ち

キンドルのレビューにも書かれていたが、「ChatGPTを使った競馬攻略法」とは実は「ChatGPTを使って書かれた競馬攻略法」が正しい。

他にも突っ込みどころ満載で「生成AI」の特徴である「・・・ができます」の羅列が極端。これを書いた(コピペした)人間は既に電脳化されているようだ。

KindleUnlimitedのメンバーシップがあれば無料で読めるが、競馬的に得るものは何もないことは保証しておく。

競馬予想におけるAIの限界

仮にJRA-VANの提供する競馬データベースを生成AIが利用できるようになっても、そこにあるデータだけでは勝てる予想は難しい。なぜなら、JRAの発表しているタイムは全て0.1秒単位であり、競走馬の速度で換算すると1.8mほどの誤差があるから。きわどい写真判定では10cm程度のハナ差で勝敗が決することも多く、さまざまな補正を入れたとしても誤差が決定的に大きすぎるため、精度は上がらないのである。

AIがレース映像とパトロールビデオを解析するレベルになれば、勝てる予想ができるようになるかもしれないが、演算コストも膨大になるだろう。というわけで、当面我々は「AIに搾取される負け組」になる心配はしなくてもいいのかもしれない。

「勝ち組の馬券」とは何か?・・・オッズ分析に見る統計のマジック

とあるオッズ分析

Kindleで読んだ「オッズ分析」の電子書籍に興味深いフレーズがあったので取り上げてみる。

"午前9時40分のオッズを分析することで、競馬の勝ち組とまったく同じ馬券を買うことができる"
(出典:蘆口真史. オッズの取扱説明書: オッズ競馬の第一人者が教える (ITA出版))

根拠は、「勝ち組=自信のある人」で「自信があるから、朝一に馬券を購入できる、かつ、大金を投じることができる」ということ。
前段は良いとして、後段の主張には飛躍があるが”勝ち組が朝一に大金を投じる傾向にあることは長年の研究の中で確信を得ていること”と経験則であると主張する。

チョット怪しい統計データ

これだけでは納得性がないので統計的に以下のデータが提示されている。

確定人気 朝一人気 単勝率 複勝
1人気  1人気  36% 68%
1人気  5人気~ 15% 43%
(2004年1月5日から2017年9月10日までの合計47,212レースによるデータ)

”データに示されているように同じ1番人気の馬でも、5%の勝ち組が投票する朝一に売れている馬の方が、圧倒的に成績は良くなります。”
(出典:同上)

この本の以後の内容は全てこの主張を基に展開されており、「はたしてこれは正しいか?」が問題となる。

朝一投票の優位性?
このデータから明らかなことは、「朝一人気が5番人気以下の馬が確定人気で1番人気になった場合の単勝率・複勝率は朝一人気と確定人気がともに1番人気の馬のそれらと比較すると低い」ということ。
しかし、まず「朝一人気で5番人気以下の馬が確定人気で1番人気になる」という事象がどれほど起こるのか?
経験的には滅多にないことで、極めて混戦のレースでしか起こらないことは確実。したがって、この条件での1番人気馬の勝率も下がって当然と言える。

「勝ち組の馬券」

次に、「朝一人気と確定人気がともに1番人気の馬」が勝ち組が投票する馬だとしても、それで勝てるのか?単勝率36%では単勝回収率は80%程度なのでベタに買っていては当然負ける。従ってもう一段階の絞り込みが必要で、「朝一のオッズが確定のオッズより低い」ことが「勝ち組の馬券」の条件となる。
言い換えれば「単勝オッズが時間とともに上がっている」馬が「勝ち組」が買っている馬の可能性がある、ということになる。

現実では・・・

もちろん、人気馬の単勝オッズは下がっていくのが一般的なので、1番人気馬に限定すればこの現象は滅多には起こらない。
しかし、先週の木曽川特別での「サスツルギ」の単勝は、朝一で1.3倍だったが確定オッズは1.8倍で見事的中していた。

はたして、これは法則として成り立つのか?興味深いテーマなので次回以降で詳しく検証する予定である。