「勝ち組の馬券」とは何か?・・・オッズ分析に見る統計のマジック

とあるオッズ分析

Kindleで読んだ「オッズ分析」の電子書籍に興味深いフレーズがあったので取り上げてみる。

"午前9時40分のオッズを分析することで、競馬の勝ち組とまったく同じ馬券を買うことができる"
(出典:蘆口真史. オッズの取扱説明書: オッズ競馬の第一人者が教える (ITA出版))

根拠は、「勝ち組=自信のある人」で「自信があるから、朝一に馬券を購入できる、かつ、大金を投じることができる」ということ。
前段は良いとして、後段の主張には飛躍があるが”勝ち組が朝一に大金を投じる傾向にあることは長年の研究の中で確信を得ていること”と経験則であると主張する。

チョット怪しい統計データ

これだけでは納得性がないので統計的に以下のデータが提示されている。

確定人気 朝一人気 単勝率 複勝
1人気  1人気  36% 68%
1人気  5人気~ 15% 43%
(2004年1月5日から2017年9月10日までの合計47,212レースによるデータ)

”データに示されているように同じ1番人気の馬でも、5%の勝ち組が投票する朝一に売れている馬の方が、圧倒的に成績は良くなります。”
(出典:同上)

この本の以後の内容は全てこの主張を基に展開されており、「はたしてこれは正しいか?」が問題となる。

朝一投票の優位性?
このデータから明らかなことは、「朝一人気が5番人気以下の馬が確定人気で1番人気になった場合の単勝率・複勝率は朝一人気と確定人気がともに1番人気の馬のそれらと比較すると低い」ということ。
しかし、まず「朝一人気で5番人気以下の馬が確定人気で1番人気になる」という事象がどれほど起こるのか?
経験的には滅多にないことで、極めて混戦のレースでしか起こらないことは確実。したがって、この条件での1番人気馬の勝率も下がって当然と言える。

「勝ち組の馬券」

次に、「朝一人気と確定人気がともに1番人気の馬」が勝ち組が投票する馬だとしても、それで勝てるのか?単勝率36%では単勝回収率は80%程度なのでベタに買っていては当然負ける。従ってもう一段階の絞り込みが必要で、「朝一のオッズが確定のオッズより低い」ことが「勝ち組の馬券」の条件となる。
言い換えれば「単勝オッズが時間とともに上がっている」馬が「勝ち組」が買っている馬の可能性がある、ということになる。

現実では・・・

もちろん、人気馬の単勝オッズは下がっていくのが一般的なので、1番人気馬に限定すればこの現象は滅多には起こらない。
しかし、先週の木曽川特別での「サスツルギ」の単勝は、朝一で1.3倍だったが確定オッズは1.8倍で見事的中していた。

はたして、これは法則として成り立つのか?興味深いテーマなので次回以降で詳しく検証する予定である。