トリガミなんて怖くない!?

確信犯的トリガミとは?

CS放送で繰り返し放映されている競馬番組に「競馬バトルロイヤル」というシリーズものがある。競馬業界の様々な立ち位置の人々が繰り広げる馬券ファイトはとても興味深い。
この種の馬券勝負の番組は多く、さまざまな勝負が繰り広げられているが、先日その番組で前代未聞の珍現象が起きていた。12レース中なんと11レースを的中させながら収支は大幅赤字で敗北という、なんとも不思議な顛末だ。
この「確信犯的トリガミ」と言うべき現象は、4~5頭を対象に単勝複勝から始まって、馬連馬単、3連複、3連単などのボックスを少額購入するいわゆる「乱れ打ち」スタイルの結果であった。
複勝5点買いなど、普通こういう買い方はしないと思われるが、本人は「当てること」を目標とのことで番組の趣旨からすると異例だが、制作側に何らかの意図があったのかもしれない。

すぐそこにあるトリガミ

人はなぜトリガミ馬券を買うのか?代表的な心理は「外したくない」で、資金配分的にトリガミになっても「損を少なくできれば良し」と考えるからだろう。明らかに守りの姿勢で、狙いの本線が当たった場合の機会損失よりも狙いが少しはずれた場合の補償を重視する考え方である。
ギャンブルである以上「常に攻めの姿勢だけでは勝てず、臨機応変に守ることも必要である」という考え方にも一理あるだろう。
確かに戦いを避けることができないならばその通りだ。しかし競馬の場合、毎レース馬券を買わなければならないわけではない。特殊な状況を除いて、いわゆる「見」が許されている場合、「見」は「トリガミ」に勝るのである。
個人の経験的には、トリガミ馬券を買いたくなるレースは見したほうが馬券収支は向上する、と感じている。

馬券の種類によるトリガミ

よく、「プロは単勝で勝負する」などと言われることがあるが、その真偽はさておいて、単勝1点勝負であればトリガミは起こりようもない。ただ、単勝ではオッズが低いので、頭から馬単流しで勝負することもあるだろう。事象的に「単勝」と「馬単2着総流し」は等価だが、馬券収支的には対極にある。
馬単の場合、相手を絞れば「抜け」が生じるし、総流しすればトリガミの可能性が出てくる。具体的には、18頭立てで総流しの場合、馬単17通りを買うことになるが、均等買いではオッズ17倍以下の買い目はトリガミになる。

以下のグラフは、単勝オッズ別の単勝(青)、馬単頭固定2着総流し均等買い(赤)および馬単頭固定2着1~3番人気流し均等買い(灰)である。JRAの払戻率は、単勝80%、馬単75%なので単勝が有利なのは明らかだが、馬単でも総流しと1~3番人気流しの差が大きいことに気が付くだろう。(サンプル数:約7万レース)

単勝オッズ別に単勝回収率と馬単回収率を棒グラフ化

単勝オッズ別回収率(JRA2013年~2023年)


払戻率5%の差は大きく、馬単、特に人気薄を絡めた馬単などは、単勝を買った場合に比べて回収率では相当な不利になることがグラフからもはっきりと現れている。

結局、最も理にかなった馬券は、トリガミを気にして資金配分に悩むことも無く、回収率も良い「単勝」と言えるのではないだろうか?